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彼の異変に気づいたのは、一ヶ月ほど前だった。
仕事が忙しくなったという理由で連絡の数が減り、あまり私を求めてこなくなった。
たまに会うといつも通りの様子だが、私は気づいた。
彼は、向こうに傾きかけている。
もうすぐ私の元から離れていく。
まだ言わせていないのに、彼が離れていってしまう。
せっかくここまで築き上げてきた関係が、全部水の泡になる。
「晃は、本気で彼女のことが好きなの?」
「…ああ。こんな俺の傍にずっといてくれた。もう浮気はしないって、決めたんだ」
「彼女の前では、でしょ?」
いつの間にか上手くなったキスを落とすと、彼は抵抗できないようだった。
一度唇を離し、微笑みかける。
「…晃は、誰のもの?」
「美咲。俺はもう…」
「じゃあ、最後でいいよ」
「え…?」
「最後でいいから、今日は…」
__いつもより激しくして。
耳元で囁く。
彼は、彼女を捨て私の元へ戻ってくる。
私の予感は、怖いほどに当たる。
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