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「どうしたの?何かあった?」
レモンティーに口をつけ、彼女の言葉を待つ。
「…亮斗と、もう駄目かもしれなくて」
濱田亮斗。
家電量販店に勤める、私たちの一歳年下の二十三歳。
人懐っこく可愛い顔をしているので、まさに"子犬"。
パピーに似ている。
なので、クールな梨子とも知り合ってすぐに打ち解けたらしい。
の、だけれど…。
店内に流れる音楽は、時の流れを遅く感じさせる。
他の客もそれぞれの空間を楽しんでいて、人の話に耳を傾けている様子はない。
だからこそ、ここは落ち着く。
「そっか…。でも、まだわからないでしょ?」
「…そう、だけど。全然連絡が来ないの。最近、デートもしてない」
二人共、一切食事に手をつけない。
目の前には美味しそうなご飯が並んでいるのに、梨子は目もくれなかった。
しかし間があってから、見え見えの嘘の笑顔を見せる。
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