榎田 梨子

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「食べよっか。冷めちゃうしね」 「…うん」 パスタを口に入れる。 広がるクリーミーな甘さと、モチモチの麺。 うん、当たりだ。 彼女はいつもタコライスを頼む。 冒険はしないタイプだ。 新メニューに手が伸びてしまう私とは正反対。 失敗しない人。 「渡辺とは最近どう?」 「上手くいってるよ。実は、しばらく龍くんの家に泊めてもらうことになったんだ」 渡辺(わたなべ)(りゅう)。 同じ会社の同じ部署に勤める同期であり、彼氏。 梨子とも同期だ。 会社で私と彼のことを知っているのは、梨子と彼の信頼している友人だけ。 「え、そうなの?」 心からの笑顔。 「なんでそうなったの?え、同棲?」 「違うよ。実はね、弟が東京に来てて。しばらくこっちにいるみたい」 「え、そうなんだ!」 「しかも、彼女連れて。なのにお金ないとか言うから、私の家を貸すことになったんだ。ラブラブな二人の邪魔はしたくないし、龍くんの家に逃げ込んだってわけです」 「なるほど…。でも、同棲体験みたいで楽しそうだね」 「ふふ、そうかな」 時間は限られている。 その中で午後のエネルギーを補給しなければならないので、ご飯を詰め込んでいく。 もちろん、おしゃべりはやめない。
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