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「あれっ? ここは……本屋?」
登山用のウェアを着て大きいリュック背負った男の視界には、何処にでもある本屋の店内が映し出される。
その光景は、よく見ると異常な部分が幾つもあった。
照明は薄暗く、出入り口が見当たらない。客や店員などの気配も無く、動かない壁時計からは異様な気配を感じる。まるで異世界に迷い込んだと錯覚してしまう程に不気味だ。
さらなる異常に気付く寸前、背後から声を掛けられた。
「いらっしゃいませ」
「うわっ!? ……おっ、驚かせるなよ!」
振返ると容姿端麗な男が立っていて、その肩の上で猿が不気味に笑う。
「フフッ……失礼しました。私は運命を操る悪魔のアイムと申します。この子は使い魔のファミリアです」
『ファミリアだ。宜しくな!』
非現実的な空間に、人語を操る猿。夢かと思った瞬間、アイムが心を読んだかの如く声を発した。
「勿論、夢ではありません。では、混乱した記憶の修復から始めましょう。あなたは休日を利用して、趣味の山登りをしていました」
『山登りをしてたんだよ』
確かに男の趣味は登山。そして今も、山登りに適した服装と装備をしている。
「そこで、あなたは最高の被写体を見つけました。太陽、雲、霧、そして偶然飛び立った美しい鳥……」
「あっ!?」
男はアイムの言葉を遮り、思わず大声を上げてしまった。
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