運命を導く本

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「本が白い……それに、題名が赤い文字?」  全ての本が飾り気の無い白色で、不気味な赤い文字の題名が書かれているだけ。  触れるのも恐ろしいと感じつつ、一つ一つ本の題名を確認した。 「アイドル? 野球選手にサッカー選手? これは……日本一の金持ち? こっちはイケメンとだけ書いてあるな……」  題名に統一性は無く、汗かきや水虫なんてふざけたものもある。 「死にかけているのに、野球選手なんて無理だろう。それにイケメンとか意味が分からない……正解はどれだ?」  焦る男がピタリと動きを止める。その視線の先にある本には、不老不死と書かれていた。本を手に取るが何も起きない。開けばいいのか? そう考えた男が再び動きを止めた。  不老不死なら助かるだろうが、その後はどうなるのだろう? 地球が滅亡しても生きているのか? 愛する人の死を繰り返し見届けるのか? そんな化物になってまで、俺は助かりたいのか?  本を棚に戻し、残り時間は十秒を切った。  死を覚悟して座り込んだ男は、棚の一番下に置かれた本を手に取る。  目線の高さにあった本の題名は、不滅の肉体。  肉体は滅びないが、死は訪れる? これならばと、望みを賭けて本を開いた。    白紙のページに文字が浮かび上がって行く。  この本を手にした者は、不滅の肉体を手に入れる。どんな怪我や病気でも滅びる事は無く、脳が死すべき時までこの世を生きる。  正解なのか? 理解が出来ないまま、男の魂は崖から落下している肉体へと戻った。
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