Part.3

5/5
前へ
/12ページ
次へ
 終わりは実に呆気なかった。  和孝は崩れた足場と共に、警官達のところまで落下してきた。  グシャッ。  その音を最後に辺りに沈黙が走る。  和孝は、ピクリとも動かなかった。  それは和孝が持っていたパソコンも同じで、ただ暗くひび割れた画面を写すだけであった。  しばらくして、警官達が溜め息を吐き出した。 「どうするよこれ?」 「どうするたってなぁ……」 「逃亡の先の事故死……じゃダメか」 「そりじゃあ俺達が説明責任負わされるぞ」 「めんどくせえ。冗談じゃない」 「自殺ってことで何とか処理出来ないか?」 「そっちの方が楽だな。やってみよう」 「たくっ。無駄に逃げ回りやがって」 「あぁー、早く帰りてぇ」  結局、和孝の死を自殺として処理する事は出来なかった。  彼が直前まで配信していた動画が証拠になったのだ。  和孝は逃亡のすえ事故で死亡と報道される。  警官等は説明責任を問われたものの大して大事にならず終わった。  皆、和孝の自業自得と認識したからであった。  ネット上を騒がせた今回の事件はしばらくワイドショーなどで取り上げられたが、その内に誰も話題にしなくなった。  ホームレスの殺害動画も削除され、それに伴い他の和孝が上げた動画もほとんど削除される。  今回の一件はネット上で時々取り上げられるだけとなった。  和孝の起こした事件も、凶悪な犯罪も全て、今では忘れさられている。  凶悪事件が起きても、またすぐに事件が起きる。  皆、一つの事件に関心を抱いている暇などないのだ。  こうして、和孝が起こした一連の事件は誰の心にも残らず忘れ去られた。  世界は今も変わらず回り続けてる。  それはきっと、今日も平和だからだろう。  異常な事など何もない。  あっても誰にも何も関係ないのだ。       
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加