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「はい、皆さんこんばんわぁ!笹クマです!今日はねぇ、笹クマ一世一代の生配信をしちゃいます!見逃し厳禁ですよー!」
和孝はパンダのお面を被り、パソコンを片手に夜
の街へ繰り出していた。
時間は深夜三時。
人はまばら、というかほとんどいない。
「皆さんご存知の方も多いかもしれませんが、笹クマ、今まさにポリスに追われています!というわけで今回はぁ、笹クマが捕まる瞬間まで一挙生配信しちゃいますっ!人が警察に捕まる瞬間がリアルタイムで見れちゃいますよー!」
和孝は、自分の人生の転落の瞬間までネットで公開することを選んだのだ。
ここまですれば、きっと皆自分を認めてくれるはずだと。
伝説に残る神回になると確信していた。
自分はきっと警察に捕まってしまうだろう。
ならその瞬間をネットで流してやろう。
こんな配信は普通の人間には出来ない、自分にしかきっと出来ない最高のショーになるのだ。
自分は伝説になるのだ。
そう考えると高揚感でゾクゾクとした。
その結果どうなるかなんて、和孝の頭にはなかった。
和孝にとって、より一人でも多く自分の配信を見てもらうことが何よりも大事だったのだ。
「では、まず手始めに!交番に突撃したいと思いまぁす!」
どうせやるなら派手に。
和孝は手に持った火炎瓶を握りしめる。
交番が見えてくると、和孝はそっと近づいていった。
中に居眠りしている警官が一人。
それを確認すると、和孝は入り口まで走る。
そしてーー
「こんばんわぁ!笹クマでぇす!!」
そう叫びながら突入した。
寝ぼけ眼で状況が掴めていない警官に向かって、火炎瓶を投げ付けた。
破裂音。
警官の悲鳴。
辺りに散布し広がる炎。
それだけ確認すると、和孝は全速力で交番から離れた。
すぐに応援の警察が来るだろう。
できるだけたくさん集まってくれよーー。
騒ぎは大きい方が盛り上がるんだからーー。
「それでは!ポリスとの追いかけっ子を始めたいと思いまぁす!!」
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