Part.3

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 和孝の予想通り、数分後には街はパトカーや警官が行き交い、騒然としていた。  和孝はその中を逃げ続けた。  走って、隠れて、また走る。  そうして警官から逃げ回る。  その間にも、パソコンの画面に向かって実況することを忘れない。  閲覧数を示すカウンターも、コメント欄も、数字は上がり続け止まらない。  この調子ならもうすぐ自己最高記録の視聴者数を稼げるだろう。  和孝は笑いが止まらなかった。  パトカーの追跡から身を潜め、警察の追手をなんとかやり過ごす。  走り酷使し続ける体はすでに限界で、息も絶え絶えだった。  このままでは、もうすぐ捕まってしまうだろう。  だがそれでいい。  どうせ捕まるのなら最後まで足掻こう。  そのほうがきっと盛り上がる。 「止まりなさいっ!」 「聞きましたかぁ皆さん!!止まりなさいだって!止まるかよ捕まえてみせろよバァーカ!!」 『警察無能だなwww』 『はよ捕まえろよ』 『おれここまできたら笹クマ応援するわ』 『お巡りさんこっちです!』 『警察vs笹クマ』 『もうパトカーで引いちゃえよwwwwww』 『笹クマガンバww』  コメント欄に書き込まれる言葉が、今まさに自分を見てくれているという実感が、疲れ切ってるはずの体に力をみなぎらせる。 「よーっし!こうなったら逃げ切ってみせっぞ!!見ててください皆さんっ!!」  逃げ切れるはずが無いのに、高揚感に包まれた和孝は止まらない。  だが、警官との距離はじりじりと狭まっていく。  和孝は笑いながら、目の前の廃ビルの規制線を乗り越え、そのまま外の螺旋階段を駆けて上がって行く。  ふと、後ろから追ってくる警官の気配が消えている事に和孝は気づいた。  階段の途中で立ち止まり下を確認すると、警官達はなぜか階段を上がらず、その目の前で和孝に降りてくるよう叫んでいた。 「アホかっ!誰が降りるかよっ!!」  和孝は構わず階段を駆け上がる。  その先の足場が、腐食している事に最期まで気づかずに。  
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