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終わりは実に呆気なかった。
和孝は崩れた足場と共に、警官達のところまで落下してきた。
グシャッ。
その音を最後に辺りに沈黙が走る。
和孝は、ピクリとも動かなかった。
それは和孝が持っていたパソコンも同じで、ただ暗くひび割れた画面を写すだけであった。
しばらくして、警官達が溜め息を吐き出した。
「どうするよこれ?」
「どうするたってなぁ……」
「逃亡の先の事故死……じゃダメか」
「そりじゃあ俺達が説明責任負わされるぞ」
「めんどくせえ。冗談じゃない」
「自殺ってことで何とか処理出来ないか?」
「そっちの方が楽だな。やってみよう」
「たくっ。無駄に逃げ回りやがって」
「あぁー、早く帰りてぇ」
結局、和孝の死を自殺として処理する事は出来なかった。
彼が直前まで配信していた動画が証拠になったのだ。
和孝は逃亡のすえ事故で死亡と報道される。
警官等は説明責任を問われたものの大して大事にならず終わった。
皆、和孝の自業自得と認識したからであった。
ネット上を騒がせた今回の事件はしばらくワイドショーなどで取り上げられたが、その内に誰も話題にしなくなった。
ホームレスの殺害動画も削除され、それに伴い他の和孝が上げた動画もほとんど削除される。
今回の一件はネット上で時々取り上げられるだけとなった。
和孝の起こした事件も、凶悪な犯罪も全て、今では忘れさられている。
凶悪事件が起きても、またすぐに事件が起きる。
皆、一つの事件に関心を抱いている暇などないのだ。
こうして、和孝が起こした一連の事件は誰の心にも残らず忘れ去られた。
世界は今も変わらず回り続けてる。
それはきっと、今日も平和だからだろう。
異常な事など何もない。
あっても誰にも何も関係ないのだ。
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