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和孝は悩んでいた。
次に上げる動画のネタが思い浮かばないのだ。
「完っ全にネタ切れだ……。どうしよう」
いつものペースなら、そろそろ動画編集を行っているところなのだ。
少しでも配信が遅れれば、視聴者が離れていってしまうかもしれない。
失望されるかもしれない。
それは、何より恐ろしかった。
だが、家に居てウダウダしていても仕方ない。
和孝はネタ探しのために外に散歩に出ることにした。
何か、何かないか。
繁華街や普段歩かない道も散策してみるが、一向にいいネタは現れないし、思いつかない。
そして、橋から川を眺めている時に、それを見つけた。
河川敷にダンボールやビニールを積み重ねたゴミを見つけたのだ。
いや、ただのゴミではない。
中に人が住むゴミだ。
和孝は河川敷まで降り、慎重にそのゴミの山まで近づいていく。
人の気配がない。
どうやら住人は今、留守のようだ。
和孝の住む街ではほとんどホームレスなど見たことがない。
それが、こんな所に居るとは。
今にも崩れそうなそのダンボールハウスは、離れていても分かるぐらい異臭を放っていた。
その異臭に鼻を紡ぐ事も忘れ、和孝は歓喜に震えていた。
使える。これは使えるぞ。
和孝は急いで家に戻った。
そして撮影のための準備を始める。
愛用のカメラはもちろん、中学の頃野球で使っていたバット。
他にも手に持てるだけの道具を準備した。
もちろん、パンダのお面も忘れずに。
和孝は夜を待った。
時間は深夜がいい。
万が一邪魔が入ったら台無しだ。
和孝は肩をゆすりながら笑って、その時を今か今かと待った。
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