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「はーい皆さん、笹クマでーす!元気してますかぁ?今日はねぇちょっと深夜なんで声小さいのは勘弁してくださいっ」
和孝はパンダのお面を被って、カメラの前でお決まりの挨拶をした。
「今日はね、今日はねぇ。珍しく笹クマ、社会貢献しに行きまぁす!ズバリ、ゴミの清掃でぇす!」
和孝が向かう先は一つ。
昼間に見つけたホームレスの家。
「いやぁ、笹クマもびっくりしましたよ。まさか自分の住む町に歩く粗大ゴミが居るってんだから!これはねぇ、掃除しなきゃダメでしょう!」
和孝は興奮を抑えられず、思わず声が大きくなる。
しかし目的の場所を見付けると、声を落とし静かに歩み近づいていく。
「皆さーん。見えます?あれが歩く粗大ゴミの家です。いやいや汚いですねぇ。臭いもすごいですよ」
ダンボールハウスの前まで来ると、カメラを定位置にセットする。
しっかり撮れてることを確認すると、バットを手に構え、ダンボールハウスもといゴミ山に近づいていく。
バットを掲げーー
「こんばんわぁ!笹クマでぇす!!」
そう叫ぶと、バットをゴミ山に振り下ろした。
ダンボールハウスはグシャリ、と潰れ簡単に、本当のゴミ山と化した。
和孝が邪魔なダンボールを剥ぎ取ると、中から住人であろう男性が見えた。
男性は寝ていたところを起こされて、目を擦りながら突然の事態に辺りを見回す。
「居ました!居ました!ゴミです!社会のゴミクズです!それでは、今から掃除したいと思いまぁす!!」
和孝がカメラに向かってそう宣言する。
そしてホームレスの男性が何か言うよりも先に、バットを振り下ろした。
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