Part.2

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 辺りに嫌な音が響く。  男性が唸り声を上げた。  それでも、興奮しきった和孝は止まらない。 「本当にねぇ、彼らってどこから湧いてくるんでしょうねっ!生きてて迷惑って自覚ないのかなっ!?」  何度も何度も、バットを振り下ろす。  その度嫌な音と、男性の悲鳴が響く。  男性は身を守るように、背中を丸めた。 「皆さん見てますー?ゴミがゴミのくせに生きようとしてますよ!生意気ですねっ!」  辺りに鮮血が飛び散り、男性が吐血した。 「こういう奴等はね!僕らみたいな善良市民がわざわざ動いて掃除するしかないんですよっ!」  男性が動かなくなったところで、やっと和孝は動きを止め、荒くなった自分の息を整える。 「あれぇ?まだ生きてるぞこのゴミ」  男性は血塗れになり息も絶え絶えになりながら、確かに生きていた。  しかし和孝はこうなる事は予想通りであった。  むしろ予想通り過ぎて嬉しくてたまらなかった。 「こうなったらしょうがない。多少乱暴ですけどゴミの消毒をしましょう!」  和孝はカメラの前でそう宣言すると、腰にぶら下げていたペットボトルに手を掛ける。  ペットボトルの蓋を取り、中の液体を男性とゴミ山にかけた。  そしてポケットからマッチを取り出す。  マッチに火を着け、そしてーー 「汚物は消毒ってね!!」  男性とゴミ山に向かい、火の着いたマッチを投げた。  火は瞬く間に燃え広がった。  男性は最後の力を振り絞り、這いずり回る。 「おお!まだゴミが動いてる!どんだけしぶといんだよ、ゴキブリか!」  男性はやがて完全に動かなくなり、火はゴミ山と男性を包み込んだ。  和孝はその光景を爆笑しながら眺めていた。  火が燃え尽きたのは、数十分後に消防車が来てからだった。  辺りに火が燃え広がったところで、ようやく近所の住人が気づいたのだ。  焼け跡からは男性の遺体。  それ以外の人間の存在は、どこにもなかった。    
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