7 扉を前に(つづき)

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「あとね、干物の詰め合わせもらったから。明日にでも、食べましょ」 店が暇なのか、姉の向かいに座った母も上機嫌で言ってくる。 まぁ、どうせソレを選んだのは木元さんで、ソレを焼くのは俺だろうけど。 そう思う俺の口は、「うん」と少しぶっきらぼうに頷く。 そして、やっぱりこの親子は似た者同士だと、つくづく思う。 「で? 今日は、何作ってくれんの?」 学校はどう、とか。 元気にしてたか、とか。 それこそ夏休みはどうするのか、とか。 大人ならば、まずは会話を相手に振るものではなかろうか。 しかしこの親子に、そんな事は望めるわけもない。 「ピリ辛冷しゃぶは、有るわよ」 まるで自分が作るかのように言う母に、姉は嬉々とした声を上げる。
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