7 扉を前に(つづき)

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「アレ、この季節には美味しいよね」 「あとね、焼きナスも。あっ、ポン酢のほうね」 「ええぇ。ナスなら、揚げナスの甘酢漬けがいい」 「あぁ、それも美味しそうね」 「あとさ、メインは、おろしハンバーグとかがいいな」 はあ……。 だがここに至って、ついに俺は溜息を声にした。 そしてその声に、ほんの一瞬、女たちがキョトンと俺を見つめる。 そんな女たちを、夏のダルさと寝不足と色んな苛立ちが破裂するように 俺は、珍しくキリリと見据えた。 「メインは、冷しゃぶ。 ナスは姉貴の要望に応えてやるけど、あとは生野菜のサラダ。以上!」 ええぇ。 母娘のブーイングが、キレイに重なる。 だがさすがの俺も、これは聞き流す。 そして俺が持つ唯一の切り札を、きっぱりと口にした。 「嫌なら、食うな」
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