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「アレ、この季節には美味しいよね」
「あとね、焼きナスも。あっ、ポン酢のほうね」
「ええぇ。ナスなら、揚げナスの甘酢漬けがいい」
「あぁ、それも美味しそうね」
「あとさ、メインは、おろしハンバーグとかがいいな」
はあ……。
だがここに至って、ついに俺は溜息を声にした。
そしてその声に、ほんの一瞬、女たちがキョトンと俺を見つめる。
そんな女たちを、夏のダルさと寝不足と色んな苛立ちが破裂するように
俺は、珍しくキリリと見据えた。
「メインは、冷しゃぶ。
ナスは姉貴の要望に応えてやるけど、あとは生野菜のサラダ。以上!」
ええぇ。
母娘のブーイングが、キレイに重なる。
だがさすがの俺も、これは聞き流す。
そして俺が持つ唯一の切り札を、きっぱりと口にした。
「嫌なら、食うな」
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