序章

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 あれは呪いだったのだ。それでなければ病気一つかかったことのない妻があんな死に方をするはずがない。だから自分がしたことは間違っていない。あの娘を殺したのは一族のためでもある。  許せなかった。誰よりも自分を受け入れてくれた存在をあの女は奪ったのだ。忌々しい、鬼の娘が。そんな救いようもない化け物の首を落としたところで罰など当たるものか。ああそれにしても何故誰も彼女の死を悼んではくれぬのか。彼女が戻ることをこんなにも強く望む者が何故自分だけなのか。それほどまでに彼女が邪魔だったのか。あんまりではないか。何故、誰よりも優しい彼女がこんな仕打ちを受けるのか。  男は目の前に広がる闇を見つめ続けた。そうしていれば亡き妻の霊が現れるような気がした。恐ろしくはない、彼女になら呪い殺されてもいいとさえ思えた。  その時、微かだが背後で足音が聞こえたような気がする。どうせただの幻聴だ。  それでもどこか希望を捨てきれずに振り返ると――戦慄した。
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