抜け道

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抜け道

 うちの近所から学校までは、直線距離だと近いのに実際歩くと住宅地を迂回しなければいけないので、小学生には結構な距離だった。  みんな、どうにかもっと楽に通学できる方法はないかと考えていたのだが、ある日一人の子が、民家の敷地を無断で通り抜ければ近いということを言い出した。  その子が言うには、そこの家は玄関と裏口が細い通路で繋がっていて、簡単に反対側へ抜けられるという造りということだった。  外から見た様子ては、確かに通り抜けができそうな通路があったけれど、人の家の敷地内に勝手に入るのは悪いことだし、朝っぱらから何人もの小学生が通路を通り続けるなんて、家の人には迷惑すぎる。万が一何か置いてある物を壊したりしたらどうなるか、そういうことを考えたら、とても人様の家を通り抜けようなんて思うことはできなかった。  でも何人かは近道を通り手軽さに負けて、その子と一緒に学校へ行くようになった。そして、私のように遠回りしている子達をバカにするようになった。  楽ができるのに、どうしてわざわざ遠回りをするのか。そんなにいい子ぶりたいのか。  酷い言い種に、腹を立てて正論を言い返す子もいたけれど、近道を覚えた子達はそれすらやっかみだと言って聞かない。だから遠回りをしないグループは、あんな奴らはもう放っておこうと無視する方針決めたが、それでも、抜け道に使われている家の人に悪いので、告げ口だと言われても構わないから、学校の先生にこの件を話しておこうと意見をまとめた。  だけどそれをいよいよ訴えようとしたその日、近道グループは誰一人として登校してこなかった。  先生に聞いても、休むという報告は受けていないらしい。  勝手なことばかりしている子達だから、どんどん考え方が悪い方に向かって、みんなで学校をさぼろうなんてことになったのかもしれない。
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