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「ただいま」
「お邪魔します~」
遠くのリビングの部屋に明かりが見えて、まっすぐにそちらへと向かう。
「母さん、ただいま」
リビングへ行くと、父と母はすでに席へ着いていた。
「誕生日、今日祝う約束だったから帰りにケーキ買ってきたんだ。あ、花束も はい」
2人の前へ様々な色の薔薇の花束を置くと、2人は嬉しそうに笑っているようだった。
「青い薔薇なんて珍しいよね、珍しくて思わず買っちゃった」
色もカラフルで、もう少し落ち着いた色の方がよかったかなと思うが、誕生日くらいは好きなものをあげたい。
「ホールケーキ3つも買ってきちゃったんだけど、さすがに多かったかな?」
苦笑気味にそう話しかける。手元にある3つのケーキの箱だけで机が埋まってしまいそうだった。
「でもやっぱり誕生日は1人1つ欲しいよね?
ショートケーキとチョコレートケーキとフルーツタルト、母さんショートケーキ好きだったよね?父さんはチョコレートケーキ、」
話しかけながら箱からケーキを取り出すと、やはり少し量的に多かったかなと感じてしまう。
「あ、そうだ。帰りに永野くんに会ってね、母さん覚えてる?高校の時よく家遊びきてたんだけど
…って、あれ、永野くん?」
さっきから彼が一言も発していないことに違和感を覚え、振り返ると、彼の顔にいつもの笑顔はなかった。
「……永野くん?どうしたの?」
様子のおかしい永野くんは、暑いのか汗をかいていた。
もう7月に入り気温も高くなってきたしな…
そう思い冷房のスイッチをつけた。
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