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朝木くんが転校して来て、1ヶ月がたった。
彼が私に何か言おうとしていたような事を忘れてしまっていた頃。
放課後、職員室へ行った帰りに、廊下の向こう側から歩いて来た朝木くんにバッタリと会った。
彼は私と目が合うと爽やかな笑みを浮かべた。
「鬼塚さん、まだ帰ってなかったの?」
「あ、数学のプリントを提出するのを忘れていたから職員室に行ってたんだよ。
朝木くんは今から帰るの?」
「うん。」
「そう、じゃあ、また明日ね!」
私は手を振ってから朝木くんの前を通り過ぎる。
彼もまた小さく手を振りかえしてくれた。
「…あの、鬼塚さんっ!」
振り返ると、転校初日に見た、何か言いたそうなあの顔で朝木くんは私を見ている。
「な、なに?」
「え、と、一緒に帰らない?」
朝木くんの顔が少しずつ赤くなっていく。
つられて、私も何だか顔が熱くなった。
「あ、う、うん!いいよ。
あの、ちょっと待ってて!カバン取ってくるから!」
……一緒に帰ったなんて言ったらクラスの女子から反感買うかなぁ?
でも、まぁ、何か話があるのかも知れないし。
私は急いで教室に戻ってカバンを背負うと、朝木くんの元へ走った。
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