天国と地獄

4/5
140人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
「……うっぷ。暑いし、湿度が高ぇ…」 ウリエルは地獄に着くと、汗を拭きながらコッソリと光の粒を探しました。 しかし、なかなか見つかりません。 「……っとに。何処なんだ、全く。 あんまり遠くには落ちてはないと思うんだけどな………ん?」 ウリエルはブツブツ文句を言いながら探していると、小さく呟くような声が聞こえました。 ウリエルは、その声の方に進んでみると、岩陰から聞こえます。 「何故、天国から人間界に行くはずの光がここにいる?…可哀想に、光が弱くなっているではないか」 ウリエルが岩陰をコッソリと覗くと、悪魔ルシファーが、光の粒を手に乗せて座っていました。 それを見たウリエルは指先を自分の額に置き、小さく溜息をもらします。 『1番やっかいな悪魔に見つかったもんだ』 心の中でそう思い、仕方なくルシファーの前に出て行きました。 「ルシファー、その光の粒は手違いで地獄に来たのだ。返して貰おうか」 ルシファーはウリエルの声にゆっくりと振り向きましたが、すぐにまた手のひらの光の粒に視線を戻しました。 「……可哀想に。どうしてこの様な場所までやって来たのか」 「……ルシファー、お前には関係のない事だ。 それをこっちへ渡して、忘れてくれ」 ウリエルは手を差し出しましたが、ルシファーは まだ手のひらに乗せたままです。 「もしかして、また神の気まぐれで何かあったのでは?」 ウリエルはギクリとしました。 「……違うとは言えないが、私のミスだ。早く渡せ。今日送り出す光の粒だ」 「……地獄の気に当たったせいで、この光の粒は産まれても早く死んでしまうかも知れない。」 ウリエルが目を見開きました。 「まぁ、それも運命と言えば運命だが、神やその使いの間違いで地獄に来て、私が見つけたのもまた運命。 こいつには3つの贈り物をしよう」 「よせ。悪魔の贈り物などいらん」 ウリエルはルシファーから光の粒を取り返そうと手を伸ばしましたが、ルシファーは手を軽く握り、それを阻止します。 「神と天使の間違いがなければ、この光は普通の生活を送っていたのだ。それをお前達が台無しにした。悪いとは思わないのか。」
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!