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「あ」と短く声を発したのは、目の前のデスクの千葉さんだった。
それを合図にフッと集中力が途切れて顔を上げた私は、千葉さんの目がこの部屋の入口付近へ向いていることに気づき、何だろうとそちらへ顔を向けた。
「な、ん…………で?」
彼の部署の人間が直接私たちのトコロにやって来ることは滅多にない。
宮田はごく普通に入ってくると、「よっ」と挨拶する千葉さんに軽く手を挙げて答えて、私のデスクに近づいて来る。
そして、私はすぐに察知した。
「面倒なことが起こる」と。
「でも手遅れだ」と………。
外線電話で頭をペコペコと下げながら話す声や、カチャカチャとキーを叩く音が響く中を薄ら笑いながら歩く宮田はどこか楽しそうだ。
それがなんだか癪に障る。
「お疲れ様で………」
私が言い終わらないうちに、デスクの上やキーボードの上に、ペタペタと四角い付箋が貼られていく。
「ちょっと、何やって………」
見るとそこには走り書きされたいくつもの文字が並んでいた。
『いつになったらオレの連絡先聞いてくんの』
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