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本日の『入社10周年記念』と銘打って6人で飲み終えた後。
「おい、奈々。着いた」
「んーーーー」
「タクシー代の半分は後でキッカリ請求すっからな」
「んーーーー」
「てか、オレの肩のレンタル代も含めたら全額だな」
飲み過ぎた記憶はないのに、女のコの日のせいかいつもより酔いがまわった私をタクシーに押し込んで送ってくれた宮田。
「ちょい、部屋上がっていい?便所貸して!」
あれから2年経つのに、どれがトイレのドアかを迷わず開けられる宮田。
「はぁー、スッキリしたわー。ちょっとやばいトコまで来ててどうしようかと思ってたんだよね」
可愛いさとたまに見せる色気が同居した男、
おい、宮田知典、とやらよ。
貴方がこの部屋に立ち寄ったのが嬉しいなんて、ちっとも気づいてないでしょ?
送ってくれるのがどれだけ嬉しいかなんて、気にしてないでしょ?
なんだか無性に悲しくなって、ボロボロと目から汗が出てくる。
「おい…………どした?」
酔った勢いって、怖い。
「ずっとずっと好きだったんだから!ばかー!」
貯めてたモノは、お金でもなければ給料明細でもなく、
『好きだ』という気持ち。
先程、全部。
同期入社で唯一残っている女子の私をもう全くオンナとして見ていないんじゃないかという同期入社の男5人のうちの一人。
システム課の宮田知典、に、
ぜーーーんぶ引き出されました。
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