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あまり晴れない気分を映すように窓の外が黒い雲に覆われ始め、しばらくするとあっという間に大粒の雨を落としそして退勤時刻の少し前に雨は上がった。
ロッカーでさっとメイクを直して外へ出ると、濡れた路面に5人が立って空を仰いでいた。
「?」
つられて見上げた空の雲の流れていくスピードは速く、その隙間には7色を識別出来るほどはっきりとした虹が出ていた。
「すっげーなぁ」と子供のような声を上げたのは営業の佐藤さん。私は「ねっ?すっごいね!」とわざとはしゃいで同調し、無意識に佐藤さんの腕を掴んでいた。
……ううん、本当はどこか意識して欲しかったんだ。
自分に告白してきた女が目の前で別の男の腕に擦り寄ってキャッキャと空を見上げている姿を見せつけられるのはどんな気分?と。
そんな醜い腹の中を見抜いていたのか、宮田は、私と同じ企画部の千葉さんと開発部の中野さんとふざけあっているだけ。
チラ、と私を見たけれど、軽蔑を含んだように冷ややかな視線に私の方が耐えられずすぐに逸らしてしまった。
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