第三章 文化祭は脚本バトル

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 少女漫画には夢がある。作者と、そして読者の理想や憧れが詰まっている。俺は男だから、少女漫画や恋愛小説の持ち合わせる繊細さや美しさ、そういうものを自分の中に一切持ち合わせていない。俺は今後一生かかってもかわいい女の子にはなれないし、「美しいもの」や「かわいいもの」にはなれないのだ。  自分がどうしてもなれないもの、手に入れられないものに、人は惹かれるんだと思うんだよな。  なーんて一人で感慨にふけっていると、あるページをめくったところで俺の手が止まった。 (お、ここで新キャラ登場か……)  俺が読んでいる回から、新しい子が話に加わっている。その子はその漫画にはこれまで出てこなかったタイプの、ボーイッシュでかっこいい女の子だ。名前はカオリ。  学園でキャーキャー言われている彼女にも、実は悩みがあって、今回はメインヒロインの子がカオリの悩みを解決してあげるという回らしい。 『私、ずっと自分のことが嫌いなんだ』 『どうして? カオリちゃんはかっこよくって優しくて、みんなカオリちゃんに憧れてるじゃない』 『好きで、男みたいな恰好をしてるわけじゃないんだ……私だって本当は、他のみんなみたいに女の子らしい髪型にして、服も変えたい。「かっこいい」じゃなくて、「かわいい」って思われたいんだ。でも今の自分を変える勇気が、どうしても出なくて……』  …………。 (なんかこの『カオリちゃん』のキャラデザ、咲夜に似てるな)  性格はともかく、ボーイッシュな女子というと咲夜を彷彿とさせる。     
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