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女子にしては低めのちょっとハスキーな声に、周囲がきゃー! と沸き立っている。
日織ちゃんとはもちろん、かの有名な転校生、咲夜日織のことで、『こいしず』とは彼女が書いている小説『恋の雫』の略称のことを指す。
賑わっている女子どもを遠めに眺めながら、俺は「またか」と思う。
月曜日は決まっていつも同じ展開だ。
まず、その前の土日に『every』で俺が『閃光戦記』を更新するから、それを読んでくれたクラスメイトたちが俺に感想をくれる。同じように、咲夜もどうやら土曜か日曜に『恋の雫』を更新するらしく、週明けになるとファンの女の子たちがこぞって彼女を取り囲む。
最近は俺よりも、咲夜に集まる注目のほうがどんどんあがってきている気がする。まあ、転校してきてすぐに自分から「私、『every』っていう投稿サイトで小説書いてるんだよね」と明かしてたしな。
俺の小説はネット上では注目度がめちゃくちゃ高い人気小説ではあるが、クラスメイト全員が好き好んで小説読むような奴ばかりというわけでもないから、学校ではそんなに大人数に知れ渡っているわけじゃない。咲夜みたいにきゃあきゃあ騒がれてるわけでもねえし。
俺の隣で佐古田と鈴沢はまだ話している。
「咲夜さん、ほんと女子から人気だよなあ」
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