ヤクソクカノジョ。

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 ただ真っ直ぐに彼女を見つめながら、無意識に俺の足は彼女の方へ向いていた。  彼女の近くまで来たとこで、俺はようやく我に返った。  そう、彼女はもういない。今あそこにいるのは赤の他人なんだ。  にしても、すごく似ている気がする。  それこそ、彼女が成長したらこんな感じになってるんじゃないかと、そう思うくらいに。  そんなことを考えているうちに向こうもこちらの存在に気付いたようだ。  それからしばらく目が合う。やっぱり、彼女に似ている。  なんて声をかけたらいいのかわからない。どうしよう、なんだか気まずい。  少し間があって、なんとか声を絞り出した。 「あのっ……、その……海、好きなの?」  それがとっさに出た言葉だった。  声をかけたはいいものの、やっぱり気まずくてつい、目の前の彼女から視線を逸らしてしまった。  そんな俺を見て、 「うん、好き」  と、そう答える。  視線を戻すと、柔らかい笑みをこちらに向けていた。  その表情に、俺は胸を高鳴らせた。 「あっ……えっと」  しまった。声をかけたはいいけどこの後はどうしよう。  そんなとき、一人で焦る俺を見ながら、目の前の彼女はこう言ったんだ。 「――久しぶりだね。あれからもう、五年くらいかな」  表情は変わらず優しい笑みのまま。 「――えっ」  反射的にそんな声が漏れる。  だって、彼女はもう――。 「どうしたの? あれ、私のこと覚えてない?」  そんなわけない。でも、だって君はもう……。  彼女は察したように口を開く。 「ああ、えっとね、私――幽霊になっちゃったみたい」    照れたように笑う。だけどどこか少し悲しげで、寂しげだった。  俺はこの日、幽霊になった彼女と、五年ぶりの再会をした。
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