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それからしばらく、今目の前で起きている事実が信じられずにいた。
いくつも彼女に質問をした。俺と彼女についての、いろいろなことを。
彼女は全て答えてくれた。俺の覚えている限りでは、その答えは何もかも一致していた。
その段階でようやく、俺は彼女を疑うのをやめた。
「えっと……それで、どうして君はその……」
ここまでくると当然、なんでそうなったかが気になってしまう。
「あー、まだ成仏してないのはなんでかってことだよね?」
「え、あ、うん」
「うーん、多分だけど、まだ心残りとかがあったからだと思う」
「心残り? それはどんなことなの?」
俺が問いかける。
「えっとね……ひみつ」
いたずらっぽさを含んだ笑みを浮かべてそう言う。
「え、どうして?」
「どうしても。少なくとも今は言えないの」
彼女がそこまで言ったところで、俺は聞くのをやめることにした。
もちろん、気にならないといえば嘘になる。
だけど無理に聞くのはよくない。きっと言いづらいことなんだろう。
と、そんなことを考えてる俺とは裏腹に、彼女は唐突に問いかける。
「そんなことよりキミ、彼女とかできた?」
「……へ?」
いきなりの質問に間の抜けた声を出す俺。それからすぐに答えを返した。
「ああ、いや、全然」
「ふぅん……」
彼女が訝しげに顔をのぞき込む。
「な、なに……?」
「本当かなぁって思って」
「本当だよ。それに俺、昔から好きな人いたし……」
「へぇー、そうなんだ。誰? どんな人?」
やけに彼女が食いついてくる。
「いや、そんなこと聞かれても……」
「言えないの?」
「言えないっていうか、言いづらいというか……」
「なにそれ。あ、もしかして私だったりして」
そんな彼女の言葉に、俺は息をのんだ。
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