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「へっ? な、なに?」
「だから、明日も会える? って聞いてるんだよ」
少し拗ねた顔の彼女が俺を見つめる。
「あ、うん。もちろん」
昔もよく彼女はこんな表情をしていた。
彼女のそんなところも好きだった。
「じゃあ、明日もここで」
「うん、わかった」
「それじゃ、またね」
「うん、また明日」
そう言って手を振る彼女。俺も手を振り返す。
去り際に小声で、
「今度はちゃんと来てよね」
そう言い残してこの場所を去っていった。
「あはは……」
明日、彼女に会ったら謝ろう。
若干引きつった笑みを浮かべながら、彼女の背中を見送った。
親戚の家にしばらくお世話になることにした。
二階の空いている部屋を自由に使っていいそうだ。
一室に荷物を下ろすと、長旅で疲れた体を癒すためにしばらく仮眠をとることにした。
「夢じゃないんだよな……」
ぽつりとそんなことを呟く。
冷静になって考えてみると、やっぱりおかしい。
そんなことがあり得るのだろうか。なんて、そんなのはいくら考えたところでわかるはずもない。
思いがけない再開に動揺はしたものの、俺は不思議とそれをすんなり受け入れていた。
ただ、彼女にまた会えたとこが、嬉しかった。
『――こんなとこで何してるの?』
『――海を見てるの』
『――どうして?』
『――うーん、好きだから、かな』
『――そっか。きれいだな、海』
『――うん』
ただ、なんとなく話しかけていた。
特に深い理由はなかった。
でも、もしかしたら、一目惚れだったのかもしれない。
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