0人が本棚に入れています
本棚に追加
海を眺めながら、彼女は言った。
「そっか……そうだよね。でも、ずっと謝りたかったんだ」
「変なの。そんなこと今までずっと気にしてたの? もう五年も経ってるのに」
「うん、まぁね……」
そんな言葉を交わして、お互いにクスクスと笑い合った。
「それで、よかったらなんだけどさ……あのとき俺に何を言おうとしてたのか教えてくれないかな?」
ずっと気になってた。彼女が俺に伝えたかったこと。
それが何なのか、知りたかった。
「んー、どうしよっかな」
そう言っていたずらな笑みを浮かべる彼女。
いったい何だというのか。
「そうだなぁ……。じゃあ、お祭りの最後に教えてあげる」
何か意味ありげな表情で彼女は言う。
「えっ? なんで?」
「なんでも。聞きたいならちゃんと私と一緒にお祭りを回ること。いい?」
「う、うん。わかったよ」
俺はとりあえずといった様子でうなずいた。
「絶対だよ? 約束だからね」
「うん。今度はちゃんと守るよ」
「よろしい。それじゃ、少し歩かない?」
それからしばらく浜辺を散歩した。
他愛もない会話をして、海の浅い場所で軽く遊んだりして。
そんなことをしながら、ゆっくりとした時間を二人で過ごした。
気が付けば陽は海に沈みかけ、空は茜色に染まっていた。
「もうこんな時間……」
彼女がぽつりと呟く。どことなく残念そうだ。
「そうだね……」
この景色を見ていると、なぜだか急に寂しさを感じる。
「明日も会える?」
「もちろん」
俺は即答する。
「それじゃ、今日はもう帰ろっか。明日もまた同じ時間にここにきて」
「わかったよ。それじゃあ、また」
「うん、また明日」
お互いにそう告げてから、俺と彼女は別れて家に帰った。
最初のコメントを投稿しよう!