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家に着くと、すでに夕食が用意されていた。
親戚の叔母さんとその旦那さんと三人で、昔のことや転校してからのことなど、いろいろ話ながらの夕食となった。
二人とも昔と変わらない様子で元気にしているみたいだ。
少しだけ、彼女についても話した。でもやっぱり、俺が知っている事実と何も変わらなかった。
夕食がすんだら風呂に入り、それから課題に少し手を付けたところで寝ることにした。
『――今日も見てるの?』
『――うん。だって、きれいだから』
『――でも、そんなに毎日見てたら飽きちゃわない?』
『――全然。キミは海、好き?』
『――どうだろ。考えたことないな。でも、嫌いではないかな』
『――そっか』
彼女はいつも一人だった。
ただじっと海を見つめていた。
そんな彼女の姿を、俺はときどき見かけていた。
それから気づけば彼女と俺はよく話すようになっていた。
なんの当たり障りもないようなごくごく普通の会話だが、彼女と会話をしている時間はすごくかけがえなないものに感じた。
このときは確実に、俺は彼女に惚れていたんだ。
その後も俺たちは、毎日顔を合わせては何かしらをしてその日その日を過ごしていった。
日が進むごとにだんだんお互いの距離は縮まっていった。
なのになぜだか遠ざかっていくようにも感じる。
多分、無意識に気づいていたから。
二人で一緒の時間を過ごせる時間は、もうそんなに長くはないということに。
祭りを二日後に控えた今日。
この日も俺たちは砂浜で待ち合わせをしていた。
いつもどうり二人で海を見つめて、時折会話をしながら静かな時間を過ごす。
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