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「離婚、したいの?」
自分でも思った以上に低い声が出た。
頭の整理も、気持ちの整理も追いつかない。咲希が何を言っているのか分からない、
「ちがっ!宏臣さんが…」
咲希は宏臣の声を聞いて焦った。宏臣が怒っている。こんな冷たい声は聞いたことがない。
「俺?」
(俺がなんだ。こんなに愛しているのに。俺の何が…)
「宏臣さん!ちゃんと話すから…。怒らないで」
咲希は自分が話す順序を間違えたことに気づいた。「ごめんなさい」と只管繰り返す。同時に泣き止んだばかりの瞳からまた涙が零れた。
「違うの。ここ最近ずっとちゃんと眠れなくて。夢に宏臣さんが出てきて…。離婚しようって。いつもいつも同じ夢で。嫌だって言ってるのに…。毎晩毎晩同じ夢で…。不安で、会いたくて」
泣きながらも必死に言葉を紡ぐ。嗚咽交じりの言葉が宏臣に伝わるのか、きちんと話さないとと思うのに、馬鹿なことを言い出した自分に呆れないか、さっきみたいな感情の篭らない冷たい声は聞きたくないと、ただただ想いを伝えていく。
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