衣擦れ

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 どうしてこうなったのか。二日連続でトぶのはまずいと思っていたはずなのに、なぜか今まさに、午後の授業をトんで、国東と河原町にいる。  どうしてとはいってみたものの、原因ははっきりしてる。国東が授業で先生から投げかけられる質問を全て、ソツのない、完璧な回答を間髪入れずに返しまくっていたら「なんなのよアレ」「感じ悪」という陰口が広がったのだ。それで国東が「やっぱり詰まらないわ」と教室を飛び出してしまった。  詰まらないとわかっていながら来たのはなんでだ?単位のためなら、「やっぱり」とはいわない。その台詞は授業の価値を再確認してるようにも思えた。そう思わせたのが昨日の僕であるのなら、放っておけなかった。  そういういきさつで国東と一緒に行動することになった。河原町にいるのは、服を買いに来たからだ。『何の用?私をいさめたあなたが私と同じことをするなんて、筋があって無いわよ?……まあいいわ。スーツ以外にどんな服を着ていいかわからないの。よかったら一緒に来てくれない?』いやいや。スーツがおかしいのは解るんだよ。四○分の一だったし。でも僕にファッションセンスはないし、僕の知ってる女は和服しか着ないんだ。 「意外と服屋さんって少ないのね」 「隣の筋にズレればなんなりとあると思うぞ」  河原町通りはどちらかといえば飯屋やアミューズメント施設が多い。新京極に入れば(わけのわからない海外向けのお店もあるが)服屋くらいあるだろう。 「意外と詳しいのね。こんなところ、来なさそうなのに」 「僕をなんだと思ってるんだよ」 「だってあなた、周りと群れないじゃない。ここには独りでいる人は少ないわ」 「少ないサンプルで断定するなよ。否定できないけど。まあ、昔は色々と振り回されていたんだよ」  中学生から高校生にかけては少し行動範囲が広がってこうして校区外に遊びにくるようになる。だが経済的及び年齢的な都合で他府県にでるようなことは少ない。ゆえに遊びに来るならだいたいここだ。いつからかあいつが変わってしまって来なくなっていたが、昔はよくつきあわされて来たもんだ。というか、そんなこと堂々といって、独りぼっちに殴り殺されても知らないからな。
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