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 部屋の中にいた面々は路人への期待の目を向けていた。しかし路人は抱えたクマのぬいぐるみしか相手にしていない。目の前にいる翼にも興味なしという感じのままだ。しかし気まずさは感じるらしく、顔が諦めモードへと移っていた。ともかく、何か言わないといけないと路人は気づく。 「あのさ。問題のコンシェルジュロボってどこ?」  だがその質問に、翼をはじめとするメンバーはもとより暁良も唖然とした。目の前には死体があるのだ。いくらベッドに横たわっていてそれほど実感がないとはいえ、そっちを訊かないのかと驚いてしまう。 「あ、あの」  できれば事件について聞いてほしい。しかし予想以上の変人具合にどうしていいか解らない。そんな困惑の翼は言葉が出てこなかった。 「俺への相談ってそれでしょ?早くしてよ」  しかし、路人はそう言ってせっつく。暁良はまあそうなるよなと、目の前で困惑している翼に同情してしまった。路人と付き合って四日目の暁良でも、まだまだ驚くことだらけだ。しかし自分の興味のあることにしか動かないことは、すでに学習済み。その差が反応の違いだろうと思ってしまう。 「早く。えっと、あなたが社長だったね?」  名乗っていたことなどすでに忘れたように路人が翼に訊く。ここで路人を追い出さないのは、先生と呼ばれる理由を知っているからなのだろう。暁良にはまったく解らないが、どうやら路人はただの変人でも社会不適合者でもないらしいことは確定だった。 「先生をご案内しろ」  ともかく引き留るべき。そう判断した翼は戸田にそう指示した。まずは路人の興味を満たせばいい。そういうことのようだ。 「は、はい」  戸田もこの展開には戸惑っているようで、ただでさえ気弱な感じだというのにさらにおどおどとしつつも路人を隣の部屋へと導く。するとどういうわけか、路人と研究室のメンバーだけでなく、他のメンバーも付いて来てしまった。死体を放ったらかしにしていいのか。暁良はそれにも戸惑ってしまう。 「それだけ、路人が重要なのか」  ネットから情報が消されていることは昼間に知っていたが、ここまでとはびっくりである。それと同時に、路人の出会いをラッキーに感じていた。これほど面白いこと、そうそう起こらない。
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