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穴の先
穴の中は光を通さず吸収してしまう様な漆黒だった。
前後左右、目を開いているのか瞑っているのかすらもわからない状況だが、菖蒲は自分が思うがままに闇の先へと進んでいく。
この先に何が待っているのかも知らずに。
しばらく進むと菖蒲は何かにぶつかる。何も見えない闇の中、感覚を研ぎ澄ましぶつかった何かに恐る恐る触れる。
それは自分の目の前に立ち塞がっている壁のようだった。さらに触れば、自分の鳩尾あたりの高さに円形の回せるノブを見つける。これは壁ではなく扉らしい。
菖蒲はノブを回し扉を開ける。
扉を少し開けると暗転していた世界には眩し過ぎる光が漏れ出てくる。その光は一瞬にして菖蒲のいた空間を支配した。
あまりにも眩しく菖蒲は目を瞑った。まぶたの裏でもまだチカチカと目が信号を出してくる。
慣れてきた時に、菖蒲はゆっくり目を開けた。
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