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目を開けると先ほどの真っ黒な闇の世界とは打って変わって、果てのない宇宙が拡がっている。
どうやら自分は透明な四角い部屋にいて、その周り全てが宇宙空間になっているようだ。
初めて肉眼で見る宇宙の景色に菖蒲は釘付けになっていた。
「おや、そんなに外が気になるんですか?」
彼女の後から声がする。彼女は肩を跳ねさせ、恐る恐る声のする方に振り返る。
振り返った先には、南国を彷彿とさせる褐色肌に艶やかな長い黒髪を持ち、真っ赤な瞳を三日月のように細めて微笑みを称える男性と、不健康そうな青白い肌に黄緑色の短髪をした、どこを見ているのか分からない瞳孔が横長な黄色の瞳を持つ、不機嫌そうな表情の男性が椅子に座ってこちらを見ていた。
「えっ、あーいや。こんな景色見るの初めてで……」
人がいるとは気づかずに一人の世界へと入ってしまった自分を恥、彼女は少し頬を赤らめる。しかし、なぜ今まで気が付かなかったのだろう。部屋に入った時、人や椅子など存在しなかったはずだが、と頭の中で疑問がうまれる。
「ふむ……至って普通のようだが、なぜ貴様のような奴がここに?」
黄緑色の髪をした男が高圧的な言葉と重厚感のある低い声、彼女を訝しむ表情で訊ねる。
「へ?えっと……穴があって、興味本位で入ってみたらここに」
菖蒲がそう答えれば黒髪の男は吹き出し肩をふるわせる。黄緑色の髪をした男は眉間に皺を寄せた。
彼女はどうしてそんな反応をされなくてはないらなのかと少しだけ苛立ちのようなものを少しだけ覚える。
「すみません突然笑ってしまって。別に貴女は変な事なんてしていませんよね。いやぁ……面白いですねぇ。後先も考えずあんな悪趣味な穴に入るなんて」
心を読むかのように答えたのは、黒髪の男だった。どうやら初めに声をかけてきたのはこちらのようだ。
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