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ソラトは家に帰り、一人で悩んだ。
相談しようにも、両親は三年前に既に他界しており、いない。
この三年間、手伝いの仕事をくれて、経済面で面倒を見てくれた町長に相談……すれば、町中を巻き込んだ騒ぎになってしまうだろう。
そうなったら、冒険者たちによる討伐隊が組まれてしまうかもしれない。
それはまずい。
あの自信はおそらく本物だ。討伐隊は全滅し、町は滅ぼされてしまう。
そして何よりも、ドラゴンは裏切者のソラトを許さないだろう。惨殺されるに違いない。
勇者とその仲間たちは、大魔王やドラゴンなどの有力な魔物を討伐したのち、その行方をくらましたとされている。
そもそもまだ現役なのかどうかすらわからない。
今から呼びかけ、明日来てもらって町を守ってもらうことなどは不可能だ。
いったい、どうすれば……。
ソラトは、朝まで眠れなかった。
***
ソラトは翌日、言われたとおりに、また山に登った
山頂近くの斜面の下、ドラゴンが出てきた横穴。この日は、大きめの岩で塞がれていた。
穴の入口のそばまで行き、声をかける。
「あ、あの……来たよ」
すると、岩がゆっくりと動き、また横穴からドラゴンが出てきた。
今度は尻餅こそつかなかったが、ソラトの足はやはりガクガクと震えてきた。
「どうだ? どうすればよいかわかったか?」
「う、うん。わかったよ」
結局、誰にも相談できなかった。
ソラトは一人で朝まで考えたが、嘘をそのまま通していく以外に方法が見つからなかった。
「ふ、船で行かないと……無理なのかも」
「船?」
ドラゴンは、船を知らなかった。
いや、正確には船を見たことはあったようだが、海を渡るものだとは知らなかったようだ。
ソラトは詳しく説明した。
「なるほど。同胞たちや大魔王様も、船で行ったのだろうか?」
「う、うん……そうだと聞いてるよ」
ドラゴンは満足そうに「そうか」と納得し、次の指示を出してきた。
「ではソラト。私もそれを使って東の大地へ行く」
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