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事ここに至っても目を覚まさない大輝を放っていく事にして、拓海は綾乃と帰路に着いた。
「みほちん、優しいでしょ」
「ああ。保険医って、皆あんな感じなのかな」
「さあ……。あ、その『保険医』て言い方、間違ってるらしいよ」
「え?」
「養護教諭っていうのが正しいんだって」
「お前よく知ってるな」
「みほちんに聞いたの」
アーケード前の十字路は、いつも赤信号で停めさせられる。
「……なあ、綾乃」
「ん?」
「今日、どっか寄り道してく?」
「あ、してくしてく!お好み焼き!お好み焼き食べたい!」
「早いな、候補出てくるのが」
「商店街においしいお店があるの!行こ!」
「おいしいお店って……『こてまる』だろ?」
「おー、さすが拓海」
「みんな知ってるよ。何を今更もったいつけてるんだか」
「だって知らなかったら悪いじゃん」
「ああ、そういう発想なのな」
信号が青になった。同じ制服を着た男女が一斉に横断歩道を渡っていく。勿論、拓海と綾乃もそこに混ざる。ごくありふれたカップルの、ごくありふれた放課後デートだった。
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