第1章 青海ヶ浜高校の日常

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 事ここに至っても目を覚まさない大輝を放っていく事にして、拓海は綾乃と帰路に着いた。 「みほちん、優しいでしょ」 「ああ。保険医って、皆あんな感じなのかな」 「さあ……。あ、その『保険医』て言い方、間違ってるらしいよ」 「え?」 「養護教諭っていうのが正しいんだって」 「お前よく知ってるな」 「みほちんに聞いたの」  アーケード前の十字路は、いつも赤信号で停めさせられる。 「……なあ、綾乃」 「ん?」 「今日、どっか寄り道してく?」 「あ、してくしてく!お好み焼き!お好み焼き食べたい!」 「早いな、候補出てくるのが」 「商店街においしいお店があるの!行こ!」 「おいしいお店って……『こてまる』だろ?」 「おー、さすが拓海」 「みんな知ってるよ。何を今更もったいつけてるんだか」 「だって知らなかったら悪いじゃん」 「ああ、そういう発想なのな」  信号が青になった。同じ制服を着た男女が一斉に横断歩道を渡っていく。勿論、拓海と綾乃もそこに混ざる。ごくありふれたカップルの、ごくありふれた放課後デートだった。
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