第2章 夏休みと放置作品

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 一学期が終わった。  拓海も大輝も、赤点補習はどうにか免れた。C組で補習の対象になったのは6人。その中には稲垣の名前もあった。 「あいつがそこまで勉強出来ないとは思わなかったなあ」  夏休み初日。拓海は部活帰りの大輝と待ち合わせて『こてまる』に来ていた。 「聞いた話だけどさ。前にいた高校では部活漬けの生活してたみたいで、予習復習をする時間がまったく無かったらしいよ」 「どこで聞くんだよ、そういうの」 「女子が噂してたんだよ、大声で」  へらを使って、ふたりは焼きかけのお好み焼きをひっくり返す。要領は拓海の方が微妙に悪い。 「あ、そう言えば俺チート読んだぜ。メッチャ面白いなアレ」 「話題の変え方が唐突だな」  拓海はへらでひっくり返したお好み焼きを押さえつけながら応えた。 「しかも何で今なんだ?もうアレ読んでる奴、あんまりいないぞ?」 「え、そうなの?」 「そりゃそうさ。最後に更新されてからもう一か月くらい経ってるからな」 「げ、マジ?」 「おおかた作者が飽きたか、急に忙しくなったか、てトコロだろ?しょせん素人が趣味で書いてるものだからな」  投稿サイトでは、書き手が途中で執筆を投げ出すという事がたまに起こる。人気どころの作品でそういう事態になるのは稀だが、弱小作家に関して言えばその限りではない。そして、俺チートの作者『毒取り犬』は、典型的な零細作家だった。
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