第1章 青海ヶ浜高校の日常

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       * * *  伊豆谷は、自分を取り囲む敵たちを睨みつけた。  元を正せばごく普通の剣道部員だ。魔法の力が奪われた今、彼を取り囲む多勢を蹴散らす事など、出来ると思うほうが不自然だった。 「清龍!」  後ろからアワードの悲痛な声が聞こえる。  彼の能力に戦闘系のものは無い。だからこそ、万全を期して伊豆谷をリードしているつもりだった。それなのに、こんな単純な罠に引っかかるとは。伊豆谷はアワードの叫びに、そんな悔恨の情を聞き取っていた。 「大丈夫です!これくらい何とかしますから、アワードさんは部屋に入ってこないでください!」  敵を目前に控えていながら、彼は敢えて振り返って笑顔を見せる。  しかしながら、その姿が虚勢にしか見えなかったのだろう。ヒエゾの配下たちに動揺した様子はなく、ただニヤニヤしているだけだった。  伊豆谷は、それまで左手で持っていた剣に右手を添え、両手持ちの姿勢をとった。 「……行くぞ!」        * * * 「……おい!拓海、行くぞ!」  不意に名前を呼ばれ、拓海はスマホから目を離した。  自分の机の前に、友人の大輝が立っている。その脇には、化学の教科書やら参考書やらが抱えられていた。 「ちぇ、今いいとこなのに」 「そうじゃねえだろ。早くしないと遅刻だぞ。ここから化学室は遠いんだから」 「はいはい」  拓海は渋々スマホをポケットに入れて、教科書の準備を始めた。
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