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ヒエゾは巨躯が印象的な男だった。顔には年齢を示す皺がしっかりと刻まれていながら、重そうな金属の鎧に身を包み、拓海らが持っている倍くらいの大きさの剣を右手で軽々と握っている。その腕力に衰えは全く無さそうだった。
「それで頭数をそろえたつもりか、アワード」
小説さながらの無感情な声で彼は言った。
「この若者たちは関係ない。お前を食い止めるのは、あくまで私たちだ」
「……なるほど。相変わらず粗相が目立つようだな、アワードよ」
「うるさい。お前たちの好きにはさせんぞ」
ヒエゾは少しだけ左の口角を動かした。あまりにそれが機微であったため、拓海は彼が笑ったのか腹を立てたのかが分からなかった。
巨体の男は不意に、ローブの男の方へ振り返った。
深々とフードをかぶっていて、それまで顔は全く確認出来なかったが、ヒエゾを見返すために上げた顎のおかげで、拓海は彼が何者なのか把握することが出来た。
「……おい、あいつ江利だぞ」
「ああ」
さすがに大輝も気が付いたらしく、拓海に声をかけてきた。綾乃はまだ状況に納得できていない様子で、拓海の後ろに隠れるようにしてくっついている。
「マメウス」
ヒエゾは息子の名を呼んだ。
「あの建物の中に、放魔石はあるのだな」
「はい。この地下にございます」
江利は恭しく答えると丁寧に頭を垂れた。
「そうか」
ヒエゾは、剣を両手持ちで構えた。
「我々はそこに用がある。すまぬが、まかり通るぞ」
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