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タイムカプセル
3月12日。
今日はタイムカプセルを開ける日だ。
だから僕は、朝も早くからこうして、山の中で土を掘り起こしている。
もうゆうに1時間も掘っているのだけど、僕のタイムカプセルは姿を現さない。
いよいよ、僕の願いは叶って、タイムカプセルはその時を迎えたのだろうか。
僕は言いようの無い興奮を覚えた。
君との約束。きっと叶えるから。
君は、生まれ変わることができるなら、綺麗なお花になりたいと言ったのだ。
君は自分を醜いと思っていた。
僕にとっては君だけが天使だった。
それなのに、君は自分の醜さを嘆き、毎日泣いていたんだ。
そんなことはないよって僕が言っても、君は全く聞き入れてくれなかった。
僕が言葉は君の耳には届かなくて、君が一番欲しかった言葉はついに君の思い人から聞くことはできなかった。
滅多に学校に来なかったけど、僕は消えてしまいそうな君のはかなさが好きだった。
痩せ細って、他の口の悪い級友からミイラだとか酷い悪口を言われて泣いている君を抱きしめたかった。僕は臆病だから、抱きしめることはできなかった。
そして君は何ヶ月も学校を休んで、ついには帰らぬ人となったのだ。
僕の世界のすべてが空を渡る荒れ狂う風のように咆哮した。
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