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「せやから、怖がらんでええのに」
「怖ないわ! せやのうて、全然見えへんしわからへんし気味悪いだけや!」
「幽霊は信じひんっかったんちゃうんか、お前」
からかうように智和は言う。沙苗は少し声を大きくした。
「今かて半信半疑やし! せやけど、自分の店でいろいろあったし、否定できひんっていうか……それに、あんたもそんな冗談言うような人やあらへんし」
「信じてくれてるんや、そりゃどうも。で、話の続きやけど」
智和が言うには、その子はこの店が気に入ってしまったらしい。絵本はたくさんあって飽きないし、子供たちもたくさん来るので寂しくない。だからしばらく、この店にいさせてほしいというのだ。
「悪いことは絶対しないからって言うてる」
「そんなんが店にいるってだけで十分『悪いこと』なんやけどなあ。幽霊がおるってだけで評判は下がりかねんし、そうなったらうちも困るんよ」
「イギリスやと、幽霊付きの物件のほうが人気出るで」
「ここは日本や!」
沙苗はため息をついた。そんな彼女とその横の何もない空間を交互に見ながら、智和は何かを考えている。
「まさか、この横におるん?」
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