迷子のお客さま

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 不意に、少し店の空気が明るく、軽くなったような気がした。沙苗と智和は思わず顔を見合わせて、そして笑った。 「喜んでるで」 「そうみたいやね」  手にした絵本を見て、沙苗はふとつぶやいた。 「……もう何冊か読む?」  つぶやいた直後、うん、と頷く男の子のイメージが頭の中に浮かんだ。 「ほな、ちょっと待ってな」  本棚の間を歩いて、沙苗は何冊か絵本を選んだ。この本を好きな子がよく選ぶ本や、男の子に人気の本。選び終わって智和を見ると、智和はにっこり笑って頷いた。 「ありがとう、って」  沙苗はその本をすべて自分で買い取って、二階に上がった。手伝うと言って智和も一緒に上がってくる。  リビングのエアコンをつけ、智和と一緒にローテーブルを出し、その上に絵本を置く。キッチンの冷蔵庫から麦茶を出しコップについで、ちょっとしたお菓子も出してテーブルに置いた。こうすることが正しいのかどうかはわからないが、少なくとも智和が黙っているということは間違ってはいないのだろう。  二人は下に降りた。 「今日はおおきにな」 「ああ、気にせんとって。力になれたんかなれてへんか微妙なところやけど、まあよろしく頼むわ。なにかあったらまた呼んでくれたらええし」  うん、と沙苗は頷いた。それからふと思い出して、智和に聞いた。     
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