act 1  瑠璃色のひとみ

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 すると、村人が帰らずに教会の外をうろうろしていた訳が分かった。一目瞭然だ。  「ヴォアがある…!」  ヴォアとは、長距離を移動する時に乗る乗り物だ。  田舎では共同で管理されたヴォアが街の中を巡回していたり、他の街とを繋いでいたり。  街から街へ荷物を運ぶにもヴォアが使われるので、職業によってはヴォアを所有している人もいるが、田舎者にとってヴォアは主に公共の乗り物だった。  しかし、貴族は一家に一台ヴォアを所有している、という噂は本当だったらしい。  「装飾が派手、だよな。皆が見る気持ちが分かる」    すこし、自嘲気味に侯爵が言った。長髪の男が大笑いする。  「王宮付きの魔技士渾身の作だもんな~! どこに居てもすぐ分かる」  「そういう狙いもあるんだろ」  「悪いことが出来ないように、ってわけか」  長髪の男は、くっくっと笑いをこらえつつ、ソフィー嬢もそう思うだろう、と彼が振り向いたのだが、先に居たはずのソフィーが居なかった。  「あれ?」  「ソフィー?」  呼ばれてソフィーはヴォアの陰から慌てて身を乗りだした。  「テーオドル侯爵様、このこがっ、、、」  「ああ、ロコ!」  ロコ、と呼ばれたのは、腰の丈程の白い石を積み木のように繋げた人形だった。  国によって自然の魔力の強弱が違う為、様々な材質のロコがおり、ラ=デラ=チッタのロコは、国の象徴でもある、白い石で出来ていることが多かった。  魔法の源から遠く離れると動けなくなる為、ロコはその国特有のものが多かったが、生まれ方は一緒だ。特別な魔技士によって、命を吹き込まれるのだ。  そして、彼らは主に魔道具の操縦士になる。  魔道具はある一程度の魔力がないと使いこなせないものが多く、しかしロコならば大抵のものは大丈夫だ。魔法を合成する機材や、兵器、そして、ヴォアの操縦士など、専任のロコが居ることも王都では珍しくはなかった。  田舎街のヴォアは街の魔技士が操縦をしているが、個人のヴォアにロコの操縦士がいる、なんてさすが貴族様といったところだろうか。  侯爵に呼ばれたロコは、ぱちはち、と瞬きすると、ソフィーのスカートの裾を離した。  そして、雫の形の黒い瞳で、ソフィーをじっと見た。    
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