act 1  瑠璃色のひとみ

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 しかし、だ。  テーオドル侯爵に関しては、知らず知らずとも情報があるのが現状だ。  王族や貴族の事は、小さな事でもゴシップ記事が載るし、人々の噂にも上る。  歴史の授業でも少し学ぶ。家系図や学問遍歴、そして政治の事など。  でも、個人的に聞きたい事が全く無い、と言えば嘘にはなる。が、本人に聞くには聞きづらい事(恋人が沢山いらっしゃるとか、王女様とはどうなのか、とかとか)ばかりであって、、、  「ええと、テーオドル侯爵様は…」  そう、しどろもどろにソフィーが言いかけたところ、テーオドル侯爵様はうーん、と不満げに唸った。  「テオ」  「え??」  「テオ、と呼んで欲しい。長いし、それに夫婦になるんだから」  「テオ・・・」  つられるように、名前を口にした、その途端、ソフィーは何か不思議な気持ちになった。  呼ばれた侯爵がソフィーを見る。つづきを促すように、少しだけ首をかしげる。  本当に、現実じゃないみたいだ。  生まれて初めて、こんな豪華なヴォアに乗って、目の前には綺麗な侯爵様。  そして、彼はソフィーの言葉の続きを待っている。真剣に。  「テオ、、は、、、」  名前って不思議だ。  どうして、ただ呼ぶだけで、こんなにも親密な気持ちになるんだろうか。    「ええと、す、好きな食べ物とか、あります、、か?」     「好きな食べ物?特に嫌いな物はないからな…。   …ああでも、最近は、出来たて、とか採りたて、には弱いな。   中央の食事は冷めたものが多いから、こっちにくると食事が美味しいよ」   そう侯爵は笑い、ディアンが頷いた。ほんとうに、こっちに来てからだいぶ太ったとぼやいてまた笑う。そして、下の街の料理屋の話で盛り上がり、王都の店とどんなに違うかを面白おかしく話始めたところで、ヴォアが止まった。  着いた所はソフィーの昔住んでいた場所、だった。  
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