act 1  瑠璃色のひとみ

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 ラ=デラ=チッタは、水の女神を神とする宗教国家である。この国の王族の位置付けは、女神の眷族となっている。その為、王族の結婚は聖職者から選ばれる習わしだ。  聖職者は、貴族の中でもエリートの家柄を持ち、かつ幼い頃から定められた修行をし聖力をつけた者しか認められない。  しかし、テーオドル侯爵はそれらに匹敵する、いや、それ以上の逸材で、王家から特にご所望されていて、歴史上初の貴族からの王配になるのではないかと噂されていたのだ。  「ええ、そうです。……しかし、その為には位が足りない。   ですから、貴女の助けが必要なのです」  紳士の固い声に、ソフィーははっとした。  そして、ゆっくりと、小さく頷いた。  「結婚、といっても、両者了解の上での書類上の結婚です。   ですので、夫婦らしく、といった事は要求されません。   仕事上のパートナーと思われてください。   公式の場で、貴女が妻として出なくてはならない場面もあるかもしれませんが、   恐らく、そう多くはないでしょう。   王女の準備が整い次第、成人の儀の巡礼が始まりますので。   ただ、念のため、そちらに通じている者を一人お付けいたします。   …ここまでで、何かご質問は?」  ソフィーは首を横にふった。「いえ、特にありません」   
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