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夕食の後、ソフィーは神父様の所へ行った。
今日の紳士との話を報告しなくては、と思ったのだ。
書物の整理をしていた神父は、ソフィーが部屋に入ってきた事に気が付くと作業の手を止めた。
「あの、神父様、今日のグーゲルさんのお話の件なんですが…」
「…ええ。あの後、あの方から聞きました。テーオドル侯爵と結婚されるのですね」
おめでとう、と神父さんはソフィーの手を握った。それは力強い握手だった。
「貴女を花嫁に、と最初聞いた時は耳を疑いましたが、やはり女神様は我らを見守っていらっしゃる。
こんなありがたいお話しを頂いて、本来貴女がいるべき世界に戻れること、
ほんとうに、おめでとう。この上ない祝福ですよ、ソフィー」
うっすらと涙をたたえた神父を見て、ソフィーは胸がつまった。
「ほんとうに、信じられないくらいありがたいお話で…。
…いままで、本当にお世話になりました。
あの……、……。」
言葉が続かなかった。
神父がどこまであの紳士から聞いたか分からないが、こんなにも手放しで喜んでくれている、ということは、恐らく、契約上の結婚ということは知らないのだろう。
そして、それは彼に言うべきではない、ということもソフィーはわかっていた。
でも、それが、神父に嘘をついているような気持ちになってしまって、ソフィーは思わずうつむいてしまう。
と、大きな暖かい手が、ソフィーの肩に優しくのった。
「まあ、突然の事で、思うところもあるでしょう。
ゆっくり、貴女らしく、これからの生活の準備をしていきましょう。」
ね、と神父は暖かく笑った。ソフィーもつられるように笑顔になった。
…そうだ、これからが本当の人生の本番なのだ。
使者が来るのがいつになるか分からないが、準備をしなくてはならない。
心を乱している余裕なんかないのだ。
もう、自分で決めたのだから。
固い決意と、これからの不安と期待。
慎重に。後悔と失敗は許されない。
……。
”本来貴女がいるべき世界に戻れること、ほんとうに、おめでとう。”
心の隅に残ってしまった神父の言葉に耳をふさぐように、ソフィーはベッドの中で丸くなった。
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