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翌日、学校から帰ると既に帰宅していた次男が頬杖を突きながらニュースを見ていた。
高校生と大学生では起床時間にかなりのズレがある。だから、朝は次男を見かけることがなかった。実質、この日初めて会ったといえる。
なんとなく気まずくて声をかけられずにいたら、次男の方から口を開いてきた。
「おかえり、ハル」
「……ただいま、冬兄さん」
「さっきな、事故が遭ったらしい」
次男に促されて、ニュースの内容に意識を向ける。
兄の言うように、たった今、交通事故が起こったところらしい。信号待ちをしていたはずの女の子が道路に飛び出し、トラックに轢かれたのだという。
その現場の名前に、僕は凍りついた。
それは、僕が帰宅途中によく寄る本屋の、目の前の横断歩道だったのだ.
愕然としていると、次男がゆっくりこちらを見た。
そして、心から嬉しそうにこう言った。
「良かったな、助かって」
それは、あの夢で聞いたものと、全く同じだった。
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