人間界へようこそ 1.はじめての洛中

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人間界へようこそ 1.はじめての洛中

「1番出口、2番出口……? どこから出たらいいんやろ」 地下鉄を降りた小稲は、早速駅の構内で迷子になっていた。 何だか入り組んでいて人も多いし、目が回りそうになる。 「この人の数は凄いなあ。 天狗の一人くらい混ざっていたりして」 呟きながら肩のあたりまで伸びた綺麗な狐色の髪を揺らし、彼女は頭上の案内板を見上げた。 だが、そこにはただ訳の分からない出口の番号が並んで書いてあるだけである。 うーん。地上に出て、山を見たら方角が分かるってお父さん言ってたっけ……。取り合えず、一番近い階段に向かおう。 ところが、小稲がスーツケースを階段の上まで引っ張り上げてそのまま歩いて行くと、どうしたことか、大きなフロアに小さな店が沢山立ち並んだ変なところに出てしまった。 小稲は立ち止まって首を傾げる。 あれ? ここはまだ地上じゃない。ということは、さっきのが地下二階で、今いるのが地下一階ってこと? いや、もしかすると、さっきの電車は閻魔様の頭のすぐ上を通るくらい、地下の深いところを走っていたのかもしれない。
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