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「あの……ほんとに俺を連れてきたの……じゃないんですか?」
どうせなら疑念は完全に晴らしておきたい。女の子を呼ぼうとするが君とか言うのは抵抗があり文体が不自然になる。
「何度も言ってるけど違うよ。私じゃ無理だよ」
小柄な女の子を見て妙に納得する。
「じゃあ一体だれが……」
「……」ブンブン
実態の見えない“犯人”の像を失う。
「もしかしてまだそこら辺にいるのかな……」
口にすることで背筋がざわりと震える。
「犯人の姿とか見てないですか?」
未知の恐怖を払おうと犯人像を鮮明にしようとする。
「ごめんね。他には誰も見てないの」
「……あの」
犯人はまだどこかにいると感じる。
「?」
「ここから逃げましょう! 早く! 犯人いつ戻ってくるかわかんないし!」立ちっガタッ
「ま、待って。落ち着いて」ガバッ
女の子に腕を掴まれてちょっと嬉しくなる。
「な……何でですか! 早くしないと」
「無闇に歩いたり走ったりしたら危険だよ! ここがどこかわかるの? 近くに人がいるかもわからないのに、どこかに落ちて怪我したらもっと悲惨なことになるんだよ?」
「じゃ、じゃあどうしたら……」
不安しかない。
「まずは落ち着いて、ね? 冷静に考えて行動すれば、きっとこの森から出られるから」ギュッ
「……」
女の子に強く腕を握られ、やっぱりちょっと嬉しくなる。最悪このまま死んでもいいかと自暴自棄になり、かえって冷静な行動がとれるようになる。
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