第3章 失われたもの

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三角形の歯は、鮫のように何十枚も生え揃い、触っただけで大怪我は免れないだろう。 「ヌマクラ!イブ!」 魔物の回りには流砂ができていた。 やたらとでかい蟻地獄みたいだ。 流れる砂の渦に飲み込まれないように下がると、僕は声をあげる。 「今落ちちゃダメだ!下に魔物がいる!」 「なんなのよこいつ!」 「落ちればこやつの餌食であるか。かといってこのままという訳にもいくまい!」 「だから見ないでってば!えっち!」 「ぬごッ!落ちるでござる!」 絡まっていない方の足で、イブはヌマクラの頭を踏みつけている。 「くそ、撃てるか……?」 「リュー殿!触手が離れたら我々が落とされるでござろう!」 「でも!」 放置していたら食べられて終わりだ。 なんとかして、ふたりを逃がす方法は…… 「ひゃっ!」 「……え」 考えていた僕の目の前を、二人が落ちていった。 触手がイブを離したんだ。 「イブ!ヌマクラ!」 砂を蹴り飛ばして魔物の口の中を覗く。 もしかしたら、運良く端の方に引っ掛かっているかもという期待を込め、けれど、魔物の歯にも、周りの砂の上にも、ふたりの姿はなかった。
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