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三角形の歯は、鮫のように何十枚も生え揃い、触っただけで大怪我は免れないだろう。
「ヌマクラ!イブ!」
魔物の回りには流砂ができていた。
やたらとでかい蟻地獄みたいだ。
流れる砂の渦に飲み込まれないように下がると、僕は声をあげる。
「今落ちちゃダメだ!下に魔物がいる!」
「なんなのよこいつ!」
「落ちればこやつの餌食であるか。かといってこのままという訳にもいくまい!」
「だから見ないでってば!えっち!」
「ぬごッ!落ちるでござる!」
絡まっていない方の足で、イブはヌマクラの頭を踏みつけている。
「くそ、撃てるか……?」
「リュー殿!触手が離れたら我々が落とされるでござろう!」
「でも!」
放置していたら食べられて終わりだ。
なんとかして、ふたりを逃がす方法は……
「ひゃっ!」
「……え」
考えていた僕の目の前を、二人が落ちていった。
触手がイブを離したんだ。
「イブ!ヌマクラ!」
砂を蹴り飛ばして魔物の口の中を覗く。
もしかしたら、運良く端の方に引っ掛かっているかもという期待を込め、けれど、魔物の歯にも、周りの砂の上にも、ふたりの姿はなかった。
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